【中学 古文】実りの秋、到達度チェック―第二回実力テストに向けて
中3受験生の皆様、二回目の実力テスト直前ですが、いかがお過ごしでしょうか?
10月の実力テストとともに、私立受験校を決定する重要なデータとなるテストなので、緊張してる方もいらっしゃるのではないかと思います。
さて私は、福岡市西区今宿駅前の藍洋塾にて、国語を担当しております、長澤倫康と申します。
当塾では夏以降、変わらず国語に力を入れておりますが、古文の得点が安定せず頭を抱えている受講生もいます。
そこで今回は、当塾以外の受験生の皆様の中で「前よりかは読めるようになったんだけど・・・」と、まだ少し古文に不安のある方を、実力テストに向けて勇気づけるべく、記事を綴りたいと思います。
この記事を読めば、どの程度まで全体像をつかまなければならないのかと、その重要性がわかると思います。
今回も、どうぞ宜しくお願いします。
目次
やはり、どんな場面かの想定から始まる
裘(かはごろも)を焚(や)きて倹を示す
昔の武帝、はじめて御くらゐにつき給うとき、司馬程拠(ていきょ)と申す者、雉(きじ)のかしらの毛をもつて裘をおり、武帝に是をたてまつる。その裘のはなやかなる事、たとえん方はなかりけり。/
武帝このよしを御覧じて、御こころにおぼしめされけるは、もしみづからこの裘を着るならば、下万民(しもばんみん)にいたるまで、いづれもこれをまなびつつ、さだめて華麗を好むべし。
しよせんこの裘をなにかせんとおぼしめし、すなわち仰せつけられて、御殿の御前において、火をもつて焚き捨て給へり。/是華麗を好まず、衣装飾ざる事を、人に示さんためとかや。/
つらつら案ずるに、上(かみ)をまなぶ下ならば、上一人のなす所、万民是を好みけり。この理(ことわり)をもってみるときは、それ天下の君たる人、よろずを慎むべきとかや。
(『帝鑑図説』による)(注)
裘…毛皮で作った衣服。
司馬…国家の軍事をつかさどる役職。
たとえん方は…たとえようが。
このよし…このこと。
万民…民衆。
まなびつつ…まねをして。
さだめて…きっと。
華麗…華やかなもの。
しよせん…それでは。
つらつら案ずるに…よくよく考えるに。
※ なお「/」は、以下の説明の便宜のための区切りです。
さて今回は前述しましたように、全体像をつかむことがメインテーマですので、問題文の全てを挙げました。
(注)も多いですし、一読でどこまでつかめたかかが、君の夏から今までの成果だと思います。
具体的には、タイトルである『裘(かはごろも)を焚(や)きて倹を示す』から、毛皮を焼いて倹約の精神を武帝が示すのかな……とイメージが出来ていれば、君はかなりの進化を遂げています。一般に、本文で最もいいたいことがタイトルとなっているわけですから。
タイトルでそこまでひらめかなかった人も、本文を読み進むつれ、上記イメージが湧いてくれば充分だと思います。
↓では
出だしからザッと見ていきます。
登場人物は武帝・程拠の二人です。
今回は二人の会話があるわけではないですが、主語があいまいにならないよう、武帝を〇で、程拠を□で囲っておきましょう。
➔ 武帝が初めて位に就いた時に、程拠から毛皮(高級品)をもらった、という場面が想定できましたか?
↓それでは
一つ一つ、訳していきましょう。
すぐに現代語訳を見るのではなく、自分で考えた上で、答え合わせのつもりでクリックしてください。
・昔の武帝、はじめて御くらゐにつき給うとき、
・司馬程拠(ていきょ)と申す者、雉(きじ)のかしらの毛をもつて裘をおり、
・武帝に是をたてまつる。
・その裘のはなやかなるなる事、たとえん方はなかりけり。
場面(事実)を踏まえての、主人公の考え・行動・意味
それでは、次の区切りへ移ります。
今回の古文は登場人物の二人のやり取りではなく、このあと主人公の思想で話が展開されます。ですのでしっかりと、武帝の意図するところをくみ取ることがポイントとなります。
まずは『武帝このよしを御覧じて、御こころにおぼしめされけるは』をサクっと訳し、
続きに集中して欲しい部分であります(流れに乗ってください)。
↓では
この先の訳を進めましょう。
・もしみづからこの裘を着るならば、
・下万民(しもばんみん)にいたるまで、
・いづれもこれをまなびつつ、
・さだめて華麗を好むべし。
・しよせんこの裘をなにかせんとおぼしめし、
・すなわち仰せつけられて、御殿の御前において、
・火をもつて焚き捨て給へり。
・是華麗を好まず、衣装飾ざる事を、
・人に示さんためとかや。
この部分の要約
この部分はタイトルが具体化されたところであり、ひたすら考えをめぐらせ、食らいついて欲しい部分です。そうはいっても、内容的には難しくありません。
‘要するに’さえつかれば、後述の設問で求められる記述を正確に書くためのステップとなります。
↓要するに、
国の(トップである)君主がぜいたくな物を着れば、全国民が真似をして、派手な物を好きになる(ぜいたくするのが当然と思う)だろう。
↓そうならば、
この裘をどうにかしようと考え、(裘を)焼き捨てた。
↓これは
自分が着飾らないってことを、世の人々に示すための行為であった。
知識的アドバイス
またこの部分は、単語や文法を気にし過ぎず、わかろうわかろうと気持ちで乗り切って欲しい部分でもあります。
ただ今後のために、以下知識事項をまとめておきます。
1、現代語の「学ぶ」は真に似せる、すなわち真似ぶ(まねぶ)が語源とされています。
2、助動詞「べし」は、スイカ止めて…すなわちザッと、推量・意思・可能・当然・命令・適当の意味がありますが、高校入試では、これを活用を含め理解していないと読めないということはありません。やはり文脈に乗って「こういうことかなぁ…」と推理しつつ読み進めることが大切だと思います(試験は時間との戦いという意味で)。
3、古文の「すなわち」は、すぐにです。
作者の考え(まとめ)
そして今回の古文は、以上の出来事までに終わらず、ここからまとめとして作者の考えが加わります(私が問題文として見てきた中では珍しいです)。
↓では引き続き、
現代語訳を進めていきましょう。
・つらつら案ずるに、上(かみ)をまなぶ下ならば、
・上一人のなす所、万民是を好みけり。
・この理(ことわり)をもってみるときは、
・それ天下の君たる人、
・よろずを慎むべきとかや。
今後に向けて
以上、全体的にどのくらい訳し、‘要するに’をつかめたでしょうか。
今回は設問自体の掲載はを割愛しますが、15~20字以上の訳を書かせるものが、それぞれ3点ずつの配点で出題されていました。
この出題傾向は、今年度の入試以降も続くのではないかと、私は予想しております。
正確に訳せないから何も書かないではなく、大筋でこういうこといっているのではないかと思ったことは積極的に書いてみましょう(テストとなると引っ込み思案になる自分に打ち克つという意味で)。
そう、これが冒頭で述べた、どの程度まで全体像をつかまなければならないのかの答えです。何とか考えをめぐらせ‘要するに’をつかみ、決して解答欄を空白のままにしない程度ということです。
公立入試まで残り約4か月です。常に入試本番を意識しましょう。
君は記述問題を空欄のまま回収される自分を想像していますか?それとも、なにか書こうと終了のチャイムまで必死になっている姿が君ですか?
もし後者であるならば、実力テスト(模試)でも実践するべきです。練習で出来ないことは、本番でも出来ないということを肝に命じ、入試までの日々を過ごしてください。
受験生の皆様、最後までご覧いただき、有り難うございます。
この記事を読んで、古文に対するモチベーションが上がったという方は、ついでに古文のコツもチェックもしておきましょう。
実力テストでの御健闘を祈るとともに、上述の精神論を含む入試に向けての更なる進化を願っております。
あとがき(保護者・一般の方へ)
本日令和元年11月1日、実力テストの終了をもって、以下を追記します。
上述してきましたように本記事は、中三受験生へ向けた学習ブログでありますが、この題材選んだことにはもう一つ、意味を含んでおります。
それは、現在の政治において、一部の政治家が、あからさまにお金のことを言い過ぎていること等を警鐘するという意味です。
ここで特定の政党名の明言は避けますが、国会議員によって『選挙に通った時点で〇千万円もらえる』、『新幹線がタダになる』等の露骨な表現が、議会の場ではなくYouTube上で行われているのは、情報社会の行き過ぎた負の側面ではないかと、私自身は感じざるをえないのです。
以下、この論拠を示します。
確かに選挙運動・政治活動の自由は、国会議員にも憲法上保障される、表現の自由(21条)の根幹をなすものです。
しかしだからといって、何でも包み隠さず公開することがクリーンな政治家といえるのかは疑問で、特に国(税金)から支給される金額や歳費特権(49条)については、表現の仕方・態様を気をつけるべきだと思います。
なぜなら、憲法前文には『そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、』あることから、議員になったこと自体でお金がもらえる・得をするニュアンスでの話し方をすれば、選挙権を有する国民は、国政に対して権威ではなくお金を付与しているかような気分になります。
そしてこのことは、国民の感覚からすれば、本来の政治と選挙のあり方があまりにかけ離れてきているように思うのです(パフォーマンスばかりが際立ち、政策に対しての関心は薄くなっているように私は思う)。
勿論、政党を運営していくには資金が必要なのでしょうが、選挙に当選することをその資金集めのための手段ととらえたり、勝つため(票集め)には手段を選ばずとにかく目立とうとする選挙戦略は、政治家の品位としていかかがなものかと思っております。
もう一つ具体例を挙げますと、当該政党からの立候補者が参議院選挙に当選後、同政党を離脱したからといって、党首と離脱した議員が脅した脅していないで揉め、刑事告発ひいては裁判沙汰にするというのも、行政権(警察)や司法権の濫用、つまりは税金の無駄遣いなのです。
例えていえば、客観的に見て自分で病院に行ける状況なのに、タクシー代わりに救急車(119)を呼ぶことと変わりません。行政・司法の場においても、一日も早く問題解決(迅速な捜査や判決)されることを望む、救済されるべき切実な国民は多数いるはずです。
少なくとも、答弁に自信があるがゆえ立候補し当選を果たした両者でしょうから、司法権の手を借りずに当事者間で解決すべき事柄だと思います。訴える議員も、訴えられたことでまた自分の名前が世に広まると喜ぶ(演技?)議員も、私は政治家たる資質を疑います。
以上を本記事の題材にあてはめるに、国民の代表者たる国会議員は武帝のように、自分の振る舞いは国民がまねるかもしれないとの意識の下で、行動すべきだと思います。
もしSNS社会を通じて、国民に目立つためならば裁判所を利用してもよいというような風潮が広がるならば、三権の一つである裁判所はすぐにパンクし、結局は三権の真ん中にいる全国民が不利益を被ることでしょう。
国会議員の行動を模倣し、YouTubeアクセス数を増やすために裁判を行うという事例が出て来てもおかしくはないのです。
選挙に勝つ(目立つ)ためなら何でもありというような国会議員の振る舞いは、先の憲法前文の続き『その福利は国民がこれ享受する』にもとる行為であり、本末転倒であると考えます。
私が、行き過ぎた情報社会に負の側面を感じる論拠は以上でございます。
そして私は以前の記事にて、世の中が政治にへの関心が薄いことについて、マスコミの報道の仕方を問題視しましたが、上記のように報道されない議員(立候補者)にも原因があるようです。
ただ、時が経つにつれ「実はこうではないか……」と考えを巡らせ、私なりの自己実現ができるのも、良かれ悪かれ、この情報社会においてです。皆さんも、どの情報を取捨選択するかを御自身の判断の下で行い、自己実現の価値を充実させてください。繰り返しになりますが、これは当塾の教育理念でもあります。
上級国民、忖度、既得権益・・・この他、さまざまな言葉が飛び交った2019年でした。
ますます、私たち一人一人が何をどう考え、どう生きていくのかが問われているような気がしております。
それでは、この辺で。
また、お会いしましょう。
長澤 倫康 (ながさわともやす)
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