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【中学 古文】コツをつかもう

中3生の皆様、はじめまして。
私、福岡市西区今宿駅前の藍洋塾にて、国語を担当しております、長澤と申します。

今年はどこも夏期講座が短くなると思いますので、より一回一回を大事に受講してまいりましょう。

さて今回は、好きな人・得意な人がそう多くない古文について、読む時の思考過程やコツを記事にしてまいりたいと思います。

この記事を読めば、古文が好きまではとはならないとしても、「コツさえつかめば、意外とわかるやん」という自信につながるかもしれません。

どうぞ宜しくお願いします。

まずは、どんな場面かを想像しよう。

沙石集〈巻第十、宗春坊遁世の事〉

南都に名僧ありけり。笠置の上人(しやうにん)に申しけるは、「あまりに貧しきままに人の請(しやう)ぜよかしと思い候(さぶら)へども、請ずる人もなし。上人は御辞退候(さぶら)へども、諸方より請じ参らする、うらやましさ

(注)
南都…奈良
笠置の上人…笠置寺を発展させた
    貞慶(じょうけい)のこと
請ぜよかし…招いてほしい

では早速、読み込んでいきましょう。
すぐに現代語訳を見るのではなく、自分で考えた上で、答え合わせのつもりでクリックしてください。

・南都に名僧ありけり。

現代語訳を見る
奈良に(有名な)僧がいました。

・笠置の上人(しやうにん)に申しけるは、

現代語訳を見る
笠置の上人に言ったのは、

はい、この部分までで、
登場人物は僧・笠置の上人の二人で、僧が笠置の上人に話しかける場面ということを想像できました(よね)か?
 ➔ 僧を〇で、笠置の上人を□で囲うとよいでしょう(古文ではほとんどの場合、登場人物のメインは二人です)。

また、貞慶を鎌倉時代の僧と知っていればよいのですが、知らなくとも上人‘うえのひと’という字から、先輩の僧くらいのイメージで、OKです。
 ➔ つまり、ある坊さんが、先輩の坊さんに話しかけた場面を想像できれば充分です。

次に、内容を訳しつつ、話の流れ推理しよう。

・あまりに貧しきままに

現代語訳を見る
(私は)たいへん貧しい状況でして

・人の請ぜよかしと思い候(さぶら)へども

現代語訳を見る
誰か(私を) 招いてほしいと思っているけれども

・請ずる人もなし。

現代語訳を見る
招いてくれる人はいません。

・上人は御辞退候(さぶら)へども、

現代語訳を見る
上人は(招きを)断っても、

・諸方より請じ参らする、

現代語訳を見る
(すぐにまた)あちらこちらよりお招きがある、

・うらやましさ

現代語訳を見る
うらやましいな

どのくらい訳せましたか?

それでは、ここでのコツを述べます。
① (注)をヒントにして、単語を分析しましょう。
 ➔「請ぜよかし…招いてほしい」とあるので、‘請ずる=招く’を推定できると思います。
②  現代語の意味から単語を分析しましょう。
 ➔ 「〇〇さんは、アカデミー賞を辞退しました。」等のフレーズを聞いたことはありますよね。これは、受賞することを‘断った’という意味です。
     

以上の訳を、まとめますと
『(私は)たいへん貧しい状況でして、誰か(私を) 招いてほしいと思っているけれども、招いてくれる人はいません。上人は(招きを)断っても(すぐにまた)あちらこちらより、お招きがある。うらやましいな。』
となります。
 ➔ とすれば次は、先輩の坊さんから何らかの意見がくるかも…と推理できますよね。

では、沙石集の続きです。

「あまりに辞退する時に、人の請ずると覚え候ふ。御房も    したまへ。さらば人も請じ申さんずらん」とのたまいければ、
(注)御房…あなた

さらに、話の流れに沿って、訳を進めていこう。

先輩の坊さんの意見の内容はやはり、~すればいいというアドバイスです。
これは、「御房も    したまへ」というセリフから、すんなりと理解できたと思います(たまに「そんなこと気にするな」等、話題が別の方向へと転換していく古文もありますが…)。

では、訳を進めていきます。

・あまりに辞退する時に、

現代語訳を見る
(私は)たくさんお断りする場合がありますので、

・人の請ずると覚え候ふ。

現代語訳を見る
人は(私を)招くのだと思えます。

・御房も    したまへ。

現代語訳を見る
あなたも    しなさい。

・さらば人も請じ申さんずらん

現代語訳を見る
そうすれば人は(あなたに)招きを申し出でようとするだろう

・とのたまいければ、

現代語訳を見る
とおっしゃったので、

どうでしょうか。
先述したコツと、最初のお坊さんのセリフ内容からの流れに沿っていれば、ここの訳は、そうは難しくないと思います。ここでも少しコツを加えます。
③ 単語単語に引っかからず、とにかく流れに沿うように(へこたれずに)、訳を進めましょう。
④ 人「の」請ずる
   ➔ 古文の「の」は、主格(が・は・も)でとらえるとスムースに読める場合が多々あります。

では、この部分の訳をまとめます。
『(私は)たくさんお断りする場合がありますので、人は(私を)招くのだと思われます。あなたも辞退しなさい。そうすれば人は(あなたに)招きを申し出でようとするだろう』とおっしゃったので、
 ➔  ちなみに辞退は、「最も適当な語句を、本文中から二字でそのまま抜き出し、解答用紙に書き入れよ。」と設問になっていました。
 ➔  このような先輩お坊さんのアドバイスに対して、さてお坊さんはどう返してくるのか…というような話の流れが推理できますよね。
 
それでは、沙石集の最終部分です。

「まれまれの請用辞退しても、またいかがつかまつるべき」と言ひける。さもと覚えてをかしくこそ。

最後は(結局何がいいたいのか?)、オチをつかもう。

・まれまれの

現代語訳を見る
漢字で書くと「稀」。つまり、めったにない。たまにしかない。

・請用辞退しても、

現代語訳を見る
お招きの用事を断っても

・またいかがつかまつるべき」と言ひける。

現代語訳を見る
またどうにもならないでしょう」と言いました。

・さもと覚えて

現代語訳を見る
それもその通りだと思えて

・をかしくこそ

現代語訳を見る
おもしろかった。

どうでしたか。
すんなり話のオチはつかめましたか?ここでもさらに、コツを加えます。
⑤ 「まれ」というひらがな等、ポッと漢字をイメージできれば、横に書いてみましょう。
⑥ 「請用(を)辞退しても」と、古文では助詞が省略される場合が多いとの前提で読みましょう。
⑦  ここで出てきた「つかまつる」や、それまでに出てきた「候う」等は敬語で特別な意味はありません。つまり、立ち止まらず、先に読み進めるようにしましょう。

では、この部分の訳をまとめます。
『(名僧は)「たまにしかないお招きの用事を断ってもまたどうにもならないでしょう」と言いました。それもその通りだと思えておもしろかった。』

それでは上記の    の穴埋めの他に、どのような設問があったかを、一つ見ておきましょう。

本文中に、うらやましさとあるが、名僧は上人のどんなところがうらやましのか。現代語で簡潔に、解答用紙に書き入れよ。

もう、おわかりですよね。
人から招かれたいと思っているけれど、招いてくれる人がいない名僧から見れば、上人は辞退し(招きを断っ)てもあちらこちらより、お招きがあるところがうらやましいのです。

    部が模範解答ですが、ここでもコツを加えておきます。
⑧ 「現代語で」とありますので現代の日常で使われている言葉で、また「簡潔に」とありますので、解答欄の大きさ目安に記述する内容をまとめましょう。

思考過程やコツ…それ以前に

以上、考え方の手順やコツを述べてまいりましたが、これら以前に、いっておきたいことがあります。

それは、読む前から「あー」と溜め息をつかないことです。

心のどこかに、なんで今さら昔の文体を読まないかんの…めんどくさーって気持ちがないですか?
そういう気持ちでは、話の道筋から遠ざかってしまいます。

今回、私が古文をテーマに記事にしたのは、実際に私の夏期講習にて、この古文の「うらやまさ」がわからないと受講生から言い続けられたからです(大幅な授業時間の延長となりました)。

「わからない(納得いかない)」の最大の理由は、人から誘われることがうらやましいのか!ってことでした。

確かに、皆さんの中には、人から誘われるよりも、家のクーラーの効いた部屋で一人、ゲームやマンガでマッタリしたいと思っている人がいるかもしれません。
しかし、それでは古文の話題に入っていないだけでなく、設問と向き合ってもいません

「名僧は上人のどんなところがうらやましのか」と聞かれているのだから、自分が人から誘われて嬉しいかどうかはさておき、このお坊さんは人から誘われたいんだな….. という前提で読み進めなければ、その後の話の流れも、設問が何を聞いているのかも見えてこないと思います。

授業を延長しつつ説明を続けていると、やっと一人の受講生が「そういえば、グループLINEとかでカラオケの誘いがたくさん来る奴と、来ない奴がいる。来ない奴は来る奴がうらやましいかも…」と言い出しました。

私は思います、あまり誘われない人がよく誘われ人をうらやましく思うのは、そんなに極端な話なのかと。
10人中8~9人位は、誘われないより誘われる人間の方がよいと思うのではないでしょうか。

私が思うに、入試問題や模試の問題、そして学校の教科書の内容もそうですが、(生まれてからの読書量など)生い立ちの違う、多くの中3生が読むのですから、その内容は常識的にも一般的にも理解しうるものとなっているはずです。

それを、「自分の考えと合わない、だからわからない」というのなら、高校受験という土俵の上にも立っていないことになると、私は思います。

今回の古文ではまず、「名僧は上人が方々から誘われることをうらやましく思っているんだ」という話の枠(ルール)の中に入りましょう。

例えばどんなスポーツ競技であれ、ルールがあって成り立つものであり、そのルールの中で得点を競うものですよね。
このような理解の上で、問題に取り組むという意味で受験(勉強)に対して大人になってください。

これは、古文だけでなく現代文や他の教科にもいえることだと思います。

まとめー最大のコツは?

それでは今一度、上述したコツを並べます。

① (注)をヒントにして、単語や文脈を分析する。
② 現代語の意味から単語を分析する。
③ 単語単語に引っかからず、とにかくへこたれず、訳を進める。
④ 古文の「の」は、主格(が・は・も)でとらえるとスムースに読める場合や、逆に「が」が、所有格(の)となる場合が多々ある。
⑤ ひらがな表現でもポッと漢字のイメージが浮かべば、横に書いてみる。
⑥ 古文では助詞や主語が省略される場合が多いので、補いつつ読むことを心掛ける。
⑦ 「候う」等の敬語で立ち止まらず、先に読み進める。
⑧ 設問に「現代語で」あれば現代の日常で使われている言葉で、解答欄の大きさ目安に「簡潔に」記述する内容をまとめる。

いかがでしたか。
このように並べてはみたものの、これらをつかむには、やはり一定量(ある程度自信が持てるまで)の古文を読み込まなくてはならないでしょう。

そこで必要なことは、自分で現代語訳を見たり、塾や学校で解説を受ける際、「なるほどな~」と納得するまでとことん考えてください。

古文には、こっけいな話や教えを説くもの、つまり理解した古文の内容は、覚えようと思わなくとも心に残り、他の古文を読む時の鍵となることが多々あります。

これこそが、古文を読む最強のコツだと私は思っております。

受験生の皆さん、古文(自分)に負けず、日々夏期講習に頑張ってください。そして(この夏の古文の到達度チェック)にもトライしてみましょう。

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長澤 倫康 (ながさわともやす)

藍洋塾の代表者兼、文系科目の担当をしています。 司法試験受験を重ねる傍ら学習塾に勤務し、子供達とふれあう中で教育に熱意を抱き、2012年に福岡市西区今宿駅前で開業しました。 現代の子供達に無限の可能性を感じつつも、日々起こる様々な問題に対し実力を発揮できていない実情を、社会に問いかけるべくブログを展開してまいる所存でございます。

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